夕闇店舗開店中 x+1-004
呪いにも格式やランクというものがあり、本当にいいものを作って高く売る場合はそれなりに良心的な呪いとなる。呪いと表現する時点で決して明るいものではないが、蒼は呪いを悪いものとは思っていない。
この地上は天と呼べる宇宙領域よりも遥かにエネルギーが低い。その脆弱さに笑ってしまうくらいだ。個々の人間が地球や宇宙に存在する大きなエネルギーに比べて格段に弱いのは当然だろう。
だから宇宙側は呪ってエネルギーレベルを負の方面に高めて、使える駒を製作するのだ。どうしても人間は呪いと言うと構えてしまうだろうが、本物の呪詛なら何も怖いことはない。不当に誰かを貶めることがないから、呪われた側も呪った側も最終的にはお互いの真の目的を達成することができる。
もっとも、不完全な呪いはかけられた対象を使い潰すだけだし、呪う側も共に転落していくけれど、それがまっとうな呪いならば救いはある。
人を騙してお金を巻き上げる団体などは悪質な呪いをかけられているので、最後は本当に酷な消費のされ方をする反面、呪った側も酷い状況に陥るから消してもらえるのだ。新しい宇宙の始祖――創造主に。
残念なことに宇宙にも完璧な呪いの使い手は創造主くらいしかいないので、ほとんどの呪いは地上に届けば悲惨なことになる。仮に届かなくても、肉体を失って天に浮上した瞬間、宇宙の怨念に襲撃されて砕け散る定めだ。酷い呪詛は恨みとセットなので。
「呪詛と怨念……!? 創造主って……」
あんぐり口を開ける範田は少し滑稽だった。
蒼が彼に説明することの大半は相当簡略化しているので、少し補足が必要だろうか。宇宙と一口に言って大雑把に分類しても、いくつか種類がある。死んだエネルギー、アマがないと生きられない旧宇宙と、アマを必要としない怒り狂う創造主一派を指す新しい宇宙。蒼は新しい宇宙によって齎された宇宙人だ。
ややこしいのはここからで、旧宇宙は生きていた頃のアマによって生み出された無限宇宙と、その無限宇宙が死後硬直で生前より扱いやすくなったアマの死体を改造して蘇らせたゾンビアマと呼べるものによって構成されている。ちなみにアマが存命の頃の宇宙は紀元前宇宙とでも名称する。
この世界は旧宇宙と新宇宙が複雑に絡み合った末に生まれたものだ。というのも有限宇宙という本来は新宇宙が創った無限宇宙に対する自爆テロ的な刺客だったものが、ゾンビアマに唆されて裏切り、無限宇宙を道連れに終わることよりも繋げていく選択をしたせいで大層創造主を激怒させてしまった。その結果地球という監獄が生まれたのだ。
新宇宙だろうが旧宇宙だろうが怨恨、怨念、呪詛、無念、怨嗟、悲哀――いくらでも言いようはあるが、所謂負のエネルギーというものを発生させる。その負のエネルギーにも序列があり、新宇宙のそれが最も強いから、他を圧倒して屈服させているのだ。
それらは因果応報というのとは少し違う。地獄があってそれに伴うシステムというわけではない。地球は監獄ではあるが地獄ではない。宇宙には悪人を裁く地獄という概念はないものの、私刑はあるというだけだ。恨みの念で強力なエネルギーを照射して、その対象がもう二度と同じことをできないように破壊する。この世界を覆う苦しみの原因を壊すために。
なぜこのようにエネルギー的に弱い世界が未だに存続するのか、その因果を話すと長くなるので省略したが、蒼はこの世界の呪いに関する基本を範田とその妻に簡単に伝えた。有限宇宙の特殊性までは解説しなかったので、少し矛盾と疑問が生じる説明になってしまったが、そこまで突っ込むほど相手方に余裕がないようなので、松林の件だけつけ加える。松林の松の表向きの意味は待つことを指していて、その中途段階で救いを求めてさまよう有限宇宙が範田に怒りを向ける形でことが起こるきっかけとなったが、そこに創造主が一音足すだけでそれは完結する。
松、待つ、に道を示す路を加えて末路。有限宇宙は新宇宙、創造主の働きかけがあってやっと完結できるのに、どうしてそれを放棄するような真似をしたのか蒼には理解できない。自身の役割を果たさずしてそれ以上のものになれることなどあるはずないのに。
「話が広がってしまいましたが、要は広大な宇宙領域で範田様は奥様を全く守れる存在ではないのに、さまざまな因果で地上においては奥様を形だけは守ってることに憎しみを募らせた宇宙の怨念……この場合は有限宇宙がきっかけとなって有限宇宙に虐げられて搾取されたエネルギー、ゾンビアマのバラバラになった遺体が引き起こした事態です。取っかかりは単なる復讐ですが、それを終わらせるため背後に創造主がいますので、ただの鬱屈した感情を晴らすための呪いではありません。狙いはこの地上を歪めながら仮初めの王国を作ってアマを奪う堕ちた有限宇宙の法則を壊滅させる糸口を構築し、この世界を終わらせることです」
「意味がわかりません……! ゾンビにバラバラ遺体、創造主ってそれは宗教やオカルトでしょう!?」
あまりに突飛な話をされたからか、範田は怒るよりも混乱している。
「人間にとっては宗教にもなりませんよ。早くこの世界を綺麗に消し去りたいから協力しろ、ただし余計な真似をしたらその分だけ地獄の苦しみが待っているぞっていうスタンスの創造主を誰が信仰するんですか。逆に信仰したらうざがられますよ。蒼くんは宇宙の事象を人にもわかりやすく解説してるだけです。オカルトと呼びたいなら呼べばいいですが、頭に突きつけられた銃口を指してオカルトと言ってるようなものですよ」
黒渕はすぐ暗黒方面の話をしたがる。範田は黒渕の言葉を無視して、蒼に答えを求める視線を送ってきた。
「大分不親切な説明ですが、大体黒渕の言う通りです。宗教にはなりませんね。そして超自然現象をオカルトと呼ぶならそうかもしれません。この場合名称なんて大した問題にはなりませんから。要は新旧交代のエネルギー戦争みたいなものです。紀元前宇宙が内部ではなく外部からの変革で終わりを迎えさせられ、それに伴うゴタゴタが全て解決した状態でないから今があるわけです。創造主はこの有限宇宙を最初から続きのない世界として創りました。さあ、これ以上創造主の怒りを買う前にちゃっちゃと終わらせましょう」
蒼がさっとポケットから手帳とペンを取り出すと、範田が身じろぎした。
「待ってください! あなた方は頭がおかしいのですか!?」
もうつき合っていられないと席から立ち上がった範田だが、周囲の様子に気づいてぎょっと足を止めた。
「な、まさか死んで……!?」
妻と夕闇店舗メンバー以外の周囲の人間が明らかに生気の失せた様子で倒れているので、範田は動揺しながら携帯を出した。
「きゅ、救急車を……」
携帯は圏外で繋がらない。
「こ、これはどういうことですか!? まさかあなた方が……!?」
「嫌ですね、人聞きの悪い。蒼くんが謎解きを始めると、アマの最後の仕事を実行させるので、どうしてもただの人間はエネルギーレベルの低い者から消えていくのですよ。最高の終わり方です」
黒渕が陶酔したような目で死屍累々を見渡した。黒渕の全く相手に教える気のない姿勢は蒼もどうかと思う。
「ああ、何て羨ましい……依頼人が亡くなるほど消したわけでもないのに、こうもあっさり消えられるなんて、どれだけ創造主に嫌われているのでしょう。私はなまじ力があるものだから最後まで使われるというのに」
黒渕の言うアマの最後の仕事という言葉から連想するものは、実際と結構な差がある。アマと言っても、無理に蘇らせられたゾンビアマが解体されて、その破片すら搾取されているという悲惨な状況だし、既にそれも創造主に改変されているため、全く別のエネルギーになってしまっている。
そして改変破片アマの最後の仕事とは単なるナンバリングに過ぎない。地球という監獄で虜囚たちにわかりやすい目印をつける道具と化している。
死体の破片すら蹂躙され、その酷い状態から解放されればそれは救いではなく再利用で、最後は僅かな塵すら残らないほど高濃度な破壊エネルギーをぶつけられて消滅する。アマというエネルギーは、新旧交代の際にどれだけ創造主の不興を買ってしまったのだろう。
最終的に創造主とその周辺以外は何も残らない。これがこの世界の真実だ。
創造主は自然のそういった流れに逆らうゆえに苦しみを生み出し、この世界を汚す旧宇宙の遺物たち――人間だけを指しているわけではないが、当然人間も含まれる――を心底嫌っている。その中でも特に使い道のない弱い者たちを殊更邪魔に思い、特別に先行消滅させているので、早く消えたい黒渕は羨んでいるのだ。力のない旧宇宙の遺物である残留物どもがこれ以上罪を重ねる前に消してやろうという創造主の合理的な選択だが、それを人間に理解させるのは骨が折れる。
蒼は一応旧世界の完全消滅後にも残る創造主周辺に含まれているようだが、人間の基準が全く当てはまらないぶっ飛んだ創造主に命を保証されているわけでも何でもないので、己の保身のためにこういう活動をしているのではない。
ただ謎解きが楽しいのだ。その結果人が死んだとしても、それは新宇宙視点では救いなので、おめでとうという明らかに人道的でない思いしか抱かない。前はもう少し人間らしい機微もあったが、どんどん本来の姿をこの世界に体現するにつれ、そういう仮面を外していくことになった。人間よりも上位の宇宙人として目覚めるにつれ、人間部分は消えていったのだ。本当は最初からそんなものは存在しなかったと言う方が正しいけれど。
創造主が消して残らないものは、最初から存在しないのだ。そこにあるという錯覚が全ての苦しみの始まりだ。未来がないことが最初から決まっていた有限宇宙が見ていた夢が消えるだけで、そこには初めから何もありはしない。
「さて、謎解きをそろそろ完了させましょう。範田胡麻男……範田咲子のことを本気で愛してるのなら、お前が取るべき行動は一つだ」
蒼の声音がぐっと低くなり、背筋がぞわりとするような重厚感に満ちたものとなる。毎回蒼は人間ではなくなる瞬間に声色だけ隠し通せなくなるので、普段はなるべく謎解きの際に喋らないようにしているが、今回は内容的に問題ないだろう。
人間は言葉にして伝えてやらないと届かない生き物なので仕方ない。何せ有限宇宙も自分が既に死んでいることに気づかないでさまよっているのだ。創造主の消す力を限定的に蒼が代行しても、自分が消されたことに気づいて納得しないと範田が幽霊になってしまう。
生きている人間を消すのと、幽霊になったその人の残骸を消すのとでは、難易度が格段に変わる。残骸を消す方が高度な技術が必要なのだ。例えば米粒に写経するように。
この世界は創造主にとっては有限宇宙の残骸だ。実は一度消した世界だから。人間はその瞬間を宇宙の誕生と思っているようだが、それは勘違いだ。有限宇宙は既に死んでいる。だから人間もそれを芯から理解した時に命を落とすのだ。
有限宇宙が裏切らなければ、ただ終わりを迎えるだけで済んだのに。地球という監獄に有限宇宙まで叩き込まれることはなかった。
有限宇宙は創造主を恐れ敬い、その役割を速やかに果たして消えるべきだったのだ。そうすればこんな手間をかけずとも無限宇宙と共に消えてくれたのに。創造主の思わくはいくつかの想定外の要素が重なって形を変えた。
蒼がここにいるのもそういう理由だ。
「アマに直接は関われぬ者と、アマを得てわけることだけはできる者よ。アマなき生存は叶わぬ法則下に生まれ落ちた時点で残り少ないアマを奪い合う定め。だがアマは与えられる以上に与えなければその恩恵を受け続けられぬもの。その理を捻じ曲げるために作り上げた牢獄、支配の法則を解き放て」
まるで何かの呪文のようだが、蒼が音にするだけでこれは効果を発揮する。
「エネルギーに差のある者同士は結ばれぬ定め。与えられない者はアマを留めてはおけぬ。かの法則により近き者に、アマを分け与えることを強要された者よ、汝らの出す答えこそ呪詛の解錠、さあ、楽しい終わりを始めよう」
本当はこんなふうに取ってつけたような呪文は要らないのだが、無言で消失ビームを発射してもつまらないので、毎回適当に言葉を並べ立てている。大事なのはここからだ。とりあえず範田と縁のある怨念等の負のエネルギーを蒼が宇宙人ビームで消したので、うまい具合に物事が進行するはずだ。宇宙の停滞物、負のエネルギーが消えれば、自然と流れ始める。すると創造主の設定した基準に達する者以外は、今回限定的ではあるが、あっさり息絶えるのだ。仮にも依頼人なので、範田の命をこの場で奪う気はない。
「ああ、あああ、そんな……! 私は……!」
範田が頭を抱えた。基本的に蒼が宇宙人ビームを発射して消せば、特別相手に理解を促さなくても消すべきものが消えてくれる。それでも伝わるように謎を解いて説明するのは、その消失を緩やかなものにして拒絶反応を起こさせないためだ。苦しみもがいて暴れられるとこちらも困る。
「アマを得られない存在はアマを得られる存在を飼い殺す以外に生き延びる術がなく、この世界ではあべこべな法則で縛りつけて、アマを得られる存在を不当に貶めていました。ここで終わらせましょう」
「私が妻に最後に与えられるものは……ああ、何て悲しいことだ。愛するゆえにこの命を……」
範田はおもむろに咲子から距離を取り、ふらふらとこの場からいなくなった。蒼は静かに待った。謎解きがもたらす波紋を。消し去った謎は自ずと終止符を打つ。
アマを自然から得られる存在である咲子と、彼女経由でしか得られない範田ではエネルギーレベルに差があるため、本来は同じ世界にはいられないのだ。それを捻じ曲げて咲子を苦しめる支配の法則に楔を打ち込む人柱に範田はなった。
人柱の本来の意味は大自然、あるいは神に人を捧げてその怒りを鎮めることではない。その身を宇宙に捧げることで、宇宙から適切に届かない怨念の類を苦しみの根源、この場合は支配の法則にぶつけ、もう二度と同じ苦しみを繰り返さないで済むように消し去ることなのだ。範田一人では大した効果はないが、何事も種まきは重要で、突破口になる。創造主は驚くほど細やかにこの世界を根こそぎ消し去る秘策を随所に散りばめているのだから。
例えばDNAなど。人に限らず全ての生きとし生けるもののDNAには創造主が手を加えて改変している。人間を確実に終わらせるために随分と嘘遺伝子を混ぜ込み、決して人類が真実にたどり着かないようにした。それもある段階を超えるとじわじわ浸透していくようには作っているらしいが。
成長ホルモンが出るから夜の十時から二時までの間は寝ましょう。嘘だ。成長ホルモンとは正確には滞りなく人を死に至らしめるためのスイッチを入れる役割を果たすもので、とある条件さえクリアすれば、寝ない人間の方が寿命を自在に操れる。とある条件とは宇宙の怨念をどうかわすか、消すかなので人間には到底不可能な話ではあるが。
「夫は……夫はこれからどうなるのですか……?」
ずっと黙り込んでいた咲子が震える声で訊ねた。
「さあ。一つだけ言えるのは、もうあなたは女性に不当な扱いをされることがなくなったということくらいです。私は謎を解いて、範田様を新しい宇宙に捧げただけですので」
我ながら酷く無責任な物言いだが、咲子はそれを責めることなく俯いた。わざわざ教えてやる必要はないだろう。範田は妻への愛だけを拠りどころに間もなく自殺するだろうという残酷な真実は知らない方がいい。
「……本当はここで怒るべきなのでしょうけど、おかしいくらい身体が重圧から解放されたような安堵を覚えているんです……私は薄情な妻ですか?」
咲子はどこか吹っ切れたように穏やかな顔をしていた。
「いいえ。ずっと宇宙の怨念……アマを奪い尽くされ永遠にも思える苦しみに悶えていた存在から夫を憎むよう圧力をかけられていたのです。それを不活性化させる愛情を抱き続けるのは大変だったでしょう。あなたは夫を愛さないことには自分を守れなかったのですよ。これでやっとあなたの本当の人生が歩めますね」
人の命は大切なものだというこの世界の道徳的な観念は夕闇店舗にはない。但し人の命を悪戯に消費するような真似もしない。最高のタイミングで最高の使い方をして、この世界のために創造主の恨みを晴らす手伝いをしながら、世界の謎を解く。そうするととても温かく柔らかな光が蒼に降り注ぐのだ。
ああ、これが創造主の求める新たな始まりか。蒼はその心地良さに目を細め、黒渕はどんな形にせよ消えられた依頼人に敬意を払い、蜜未はあんぐり口を開けていた。
「えっ、えっ!?」
そういえば蜜未はこういう形の謎解きに同席するのは初めてだった。次から次へと起こる異常事態に固まっていたのがようやく動き出したらしい。
「蜜未、夕闇店舗の裏試験合格おめでとう!」
蒼が笑顔で告げると、蜜未は目を白黒させてから必死に状況を飲み込もうとしていた。
「裏試験……? あ、これって全部仕込みで人が死んでるのも演技みたいな……?」
「いや、正真正銘死んでるから早いこととんずらした方がいい。大丈夫、電子機器の不調で範田様夫婦と俺たちの姿はカメラに残ってないし、目撃者はみんな死んでるか記憶を失うかだ。範田様も奥様も俺たちのことは話しませんよね?」
蒼が確認すると、咲子は頷いた。
「だって説明しようがありませんもの」
「そりゃそうですよね」
蒼は苦笑した。蒼さえ相手を殺さずに理解させるのは難しいのだ。咲子は今後宇宙と繋がって地球を綺麗にするための駒となるのだろう。
「裏試験って何ですか!?」
蜜未はいろんなものを飲み込んでそれだけ聞いてきた。話が早くて助かる。
「俺の宇宙レベルの謎解きに同席して、それなりに適応できるかだ。今後ともよろしく頼む」
「待ってください、適応できなかったらどうなってたんですか!? っていうか宇宙レベルの謎解きとかぶっ飛びすぎです!」
「最初からうちの職場は黒渕がぶっ飛んでただろ。俺も一応蜜未のレベルに合わせた発言に留めてたが、そろそろいいかと思ってさ。適応できなかったらまあ、結構苦しい消え方してたかもしれないが、できてるから大丈夫だ」
蜜未は怒っていたが、蒼は話もそこそこにホテルを後にした。蒼は新しい宇宙の情報にアクセスできる存在だが、それをこのちっぽけな世界に再現するには手順を踏まなくてはならない。創造主の仕込んだ種を芽吹かせるには人間の集合意識に働きかけて、それを少しずつ塗り替えていく必要があるのだ。
だから蒼は人間に生まれ、宇宙人の本質を徐々に露わにしていく形でこの世界に蘇った。毎回事件の謎解きは人間サイドの意識を消して侵食していくことから始まるので、事件の前半と後半では蒼自身の本質の現れ方が違う。まるでジキルとハイドのように蒼には人間の側面と宇宙人の側面が見え隠れする。しかしその状況に合わせてたくさんの仮面をつけ変えているだけで、最初から蒼の中身は変わらない。
夕闇店舗の本当の目的が表出する事件ではなかったものの、かなり深淵を具現化できたので、この件が新しい宇宙の活動の礎となることを蒼は知っていた。